相続解説/相続人廃除の方法
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総説
甲は、自分に対して虐待をし、重大な侮辱を加えるなどの言動を繰り返した長男に財産を継がせたくないと考えています。甲の対策として、どうすればよいでしょうか。
甲は、生前、家庭裁判所に対し、推定相続人である長男の廃除を請求することができます。また、遺言で長男を廃除する旨の意思表示をすることもでき、その場合には、甲の死亡後、遺言執行者が家庭裁判所に対し、長男の廃除を請求することになります。
相続人廃除の方法概説
推定相続人の廃除請求権は、被相続人の一身専属権であって、被相続人以外の者が廃除を請求することはできません。
推定相続人の廃除の方法には、被相続人による生前廃除と、被相続人が遺言で廃除の意思表示をする遺言廃除があります。
生前廃除の場合には、被相続人自らが自己の住所地を管轄する家庭裁判所に、特定の推定相続人の廃除を請求します。遺言廃除の場合には、効力発生後に遺言執行者が相続開始地を管轄する家庭裁判所に廃除を請求します。遺言廃除の場合、遺言執行者の指定がなかったり、欠けたりしたときは、利害関係人が家庭裁判所に対し、遺言執行者の選任を求める必要があります。
遺言廃除の場合、廃除の意思表示があれば足り、その理由の記載は法律上要求されていませんが、その理由を具体的かつ簡潔に記載しておくのがよいでしょう。死後の審判手続きに備えて、遺言書とは別に、詳細な遺言者の供述を書面にして公証人の宣誓認証を得ておくのも一つの方法です。
廃除の意思表示
廃除の意思表示の有無は、遺言の解釈問題ですので、遺言書中に明確に「廃除」の文言がなくても、これが認められることがあります。
判例には、遺言書中の「養子にあとを継がすことができないから離縁したい」との文言を、当該養子に対する廃除の意思表示であると解したものがあります。
また、裁判例として事実上離婚が成立しているものと考えて、自分の財産を妻に一切受け取らせない旨を記載した自筆証書遺言につき、妻の相続分をゼロとする指定ではなく、遺言による廃除意思の表明であるとしたものがあります。
相続分をゼロとする指定と解される場合には、その相続人は相続分がないだけで、遺留分は有しますので、その趣旨を明確に記載しておく必要があります。
家庭裁判所の判断
家庭裁判所は、諸般の事情を総合的に考慮して、後見的立場から廃除事由に該当する事実の有無を審理し、廃除相当か否かを決定します。
家庭裁判所は、審判の確定前に相続が開始した場合や廃除の遺言があった場合、遺産管理人の選任や遺産の処分禁止などの必要な処分を命ずることができます。
家庭裁判所の裁判例として、次のようなものがあります。
被相続人の長男が、被相続人に対して3回にわたって暴行を加えたことにつき、被相続人の言動に長男が立腹した事情があるとしても、60歳を優に超えた被相続人に対する暴力は許されるものではなく、しかも2回目の暴行は全治3週間の障害を負わせ入院治療を要するなど結果も重大であり、一連の暴行は虐待または著しい非行にあたるとされた事例があります。
廃除の遺言文例
推定相続人の廃除をする場合、遺言書の文例として次のような書き方があります。
「遺言者の長男○○○○(生年月日)は、遺言者を常にばか親父と侮辱罵って、しばしば遺言者に暴力を加えるなど虐待を続けるので、遺言者は長男を廃除する。」