相続分解説/相続分指定の効力
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効力の発生時期
相続分の指定は、被相続人自身が定めた場合には、遺言の効力が生じたときにその効力が生じます。また、第三者に委託した場合には、遺言の効力が生じたのち、当該第三者の指定によって、相続が開始のときに遡及して効力を生じます。
相続分の指定があった場合には、相続財産はその指定割合による遺産共有となり、各相続人は、個々の相続財産につき、指定割合による持分を有することになりますが、その最終的な帰属は、遺産分割によって決定されます。
たとえば、被相続人に、配偶者乙と3人の子A・B・Cがいる場合において、被相続人が遺言で、Aの相続分を2分の1、乙・B・Cの相続分を各6分の1にする旨の指定をしていたときは、各自指定された相続分の割合で共同相続します。
その後の遺産分割手続きにおいては、この指定相続分にもとづいて具体的な相続分が算定され、これを基礎として個々の相続財産の帰属が決定されます。
相続債務の承継
問題
遺言による相続分の指定があった場合、被相続人が相続開始時に負担していた債務の債権者は、誰に対してその権利の行使(履行請求)をすればよいでしょうか。
回答
当該債務が可分である場合には、相続債権者は、① 各共同相続人に対し、法定相続分に応じた権利の行使をすることができるほか、② 共同相続人の一人に対し、指定相続分に応じた債務の承継を承認して、指定相続分に応じた権利の行使をすることができます。
解説
民法899条は、相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する旨を規定しています。
一般に、この相続分には、指定相続分も含まれると解されています。よって、相続分の指定があったときは、共同相続人間では、相続債務中の可分債務について、指定相続分の割合で承継することになります。
一方、相続債権者との関係では、債務者はそもそも債権者の承諾なく、債務を処分する理由を有しません。また、債権者は、遺言の存在、内容を知りうる立場にありませんから、債務者である遺言者に、自らが負担した債務の承継の在り方を決める権限を認めることは相当ではありません。
そこで、平成30年改正では、相続分の指定があった場合でも、相続債権者は、① 各共同相続人に対し、法定相続分に応じて権利を行使することができ、他方、② 共同相続人の一人に対し、指定相続分に応じた債務の承継を承認して、指定相続分に応じた権利を行使することもできることとされました(民法第902条の2)。
上記①の場合、法定相続分を下回る相続分の指定がされた相続人が、相続債権者に対し法定相続分に応じた債務の支払いをしたときは、法定相続分を上回る相続分の指定を受けた相続人に対し求償権を行使することはできます。
また、上記②は、債権者の承認が共同相続人の一人に対してされれば、その効果が全相続人に生ずるようにしたものです。債権者は、一旦した承認を撤回することはできません。
上記①および②については、最高裁判所平成21年3月24日判決において、同様の判断が示されていたところです。