相続分解説/相続分指定と対抗要件
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
本ページは、相続の解説です。相続についてお困りの際は、無料相談も承っておりますのでお問い合わせください。
設問
亡き甲は、遺言により、配偶者乙の相続分を3分の2、子丙の相続分を3分の1とする相続分の指定をしたが、丙は相続不動産につき、乙・丙の持分各2分の1とする相続登記をしたうえ、自己の持分を第三者Aに売り渡して、その旨の移転登記が経由されました。
この場合乙はAに対し、相続分の指定による持分3分の2の所得を主張することができるでしょうか。
回答
平成30年改正により、法定相続分を超える相続分の指定を受けた相続人は、法定相続分を超える部分については、その旨の登記を備えなければ、第三者に対抗することはできないとされています。
設問の場合、先にAの権利取得の登記がされているため、乙は自己の法定相続分を超える部分の取得については、Aに対抗することはできません。
解説
遺言による相続分の指定があると、各共同相続人は、指定相続分にしたがい、相続財産に属する個々の財産上に共有持分を有することになります。
その場合、法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人が相続不動産につき、法定相続分での相続登記をしたうえ、その持分を第三者に譲渡し、その旨の持分移転登記が経由された場合、法定相続分を超えて相続分の指定を受けた他の共同相続人は、その持分の取得を登記なくして当該第三者に対抗することができるかという問題が生じます。
従前の判例は、法定相続分での相続登記がされても指定相続分を超える部分は無権利の登記であって、第三者は指定相続分を超える部分の持分を取得することはできないから、法定相続分を上回る相続分の指定を受けた他の共同相続人は、指定された自己の持分を登記なくして第三者に対抗することはできるとしていました。
平成30年改正では、相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については登記・登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとする対抗要件主義を適用されることとされました。
したがって、平成30年改正法の施行後に開始した相続に係る相続分の指定により不動産の権利の承継があった場合には、指定相続分による権利取得の登記を得なければ法定相続分を超える部分については、第三者に対抗することはできません。
設問の場合、相続分の指定にしたがった共同相続登記がされる前に、乙および丙の持分を各2分の1とする相続登記がされ、その後、丙持分につき第三者Aへの移転登記が経由されていますので、乙は自己の法定相続分を超える部分(6分の1)については、Aに対抗することができません。
指定相続分による指定登記
相続分の指定があると、各共同相続人は、個々の相続不動産につき指定割合による共有持分を有することになりますから、法定相続分による相続登記を経由しないで、直接指定相続分による相続登記をすることができます。
この相続登記の申請にあたっては、登記原因証明情報として相続があったことを証する戸籍・除籍全部事項証明書(戸籍・除籍謄本)などの戸籍関係書類または法定相続情報一覧図の写しのほか、相続分の指定があったことを証する遺言書(相続分の指定割合は、明示されていることを要する)の提供を要します。
遺言書は、公正証書の場合を除き、家庭裁判所の検認を得たものであることを要します。
法務局保管に係る自筆証書遺言(検認不要)について、遺言書情報証明書を提供します。
また、相続分の指定を第三者に委託した場合には、当該第三者による指定を証する図面(印鑑証明書付き)も提供します。