相続分解説/特別受益の持戻し
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
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特別受益者
共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け、または婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者がいる場合が、多々あります。これを特別受益者といいます。
その者が受けた価額を相続開始時の相続財産に持戻すこととします(特別受益の持戻し)。そして、被相続人が相続開始時に有した財産(遺贈財産を含む)の価額に特別受益者が受けた贈与の価額を加えたものを相続財産とみなします。
これに法定または指定の相続分率を乗じて得た相続分の価額から、遺贈または贈与の価額を控除した残額をもって特別受益者の具体的相続分が算出されます。
個別受益者の具体的相続分
その結果、具体的相続分がゼロ以下になる共同相続人がいる場合には、その相続人に与える財産は、遺贈や贈与を受けた財産のみとして、これを確保させることとしています。
さらに、被相続人が持戻しを免除する旨の意思を表示した場合には、これにしたがって相続財産に持戻さないことと民法は規定しています。この持戻しは、具体的相続分を計算するためのものであって、贈与財産そのものを現実に返還させるものではありません。
判例は、具体的相続分の法的性質につき、遺産分割手続きにおける分配の前提問題として、審理判断されるべき計算上の価額またはその価額の遺産総額に対する割合を意味し、実体法上の権利関係とはいえないとしています。
そして、共同相続人間において、具体的相続分の価額もしくはその割合の確率を求める訴え、または特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、いずれも確認の利益を欠き不適法であるとしています。
特別受益の範囲
次に、特別受益として持戻しの対象となるか否かの財産について検討します。
遺贈
相続人に対する遺贈は、特定遺贈か包括遺贈かを問わず、またその目的いかんにかかわらず、常に特別受益として持戻しの対象となります。
遺贈の目的物は、相続開始時の相続財産に含まれ、改めて相続財産の額には加算されません。
したがって、遺贈を受けた相続人の具体的相続分は、生前贈与を加えたみなし相続財産の額について、法定または指定の相続分率によって計算された各自の相続分額から遺贈の価額を控除した残額になります。
相続人に対する死因贈与や特定財産承継遺言による遺産の取得も、遺贈に準じます。特定財産承継遺言については、特別受益にあたるとする考え方と遺産の一部分割がされたものとする考え方があります。裁判例としては、特別受益に準じて持戻しの対象になるとしたものがあります。
贈与
相続人に対する贈与のうち、婚姻、養子縁組のため、または生計の資本として贈与した財産が特別受益財産として持戻しの対象となります。
「婚姻、養子縁組のための贈与」とは、持参金や嫁入り道具、支度金など婚姻、養子縁組のために、被相続人から特にしてもらったものを意味します。
相続人に対する贈与が持戻しの対象となるのは、相続分の前渡しとみられるからですので、これにあたるとみられる程度のものであることを要します。
たとえば、結納や挙式費用については、被相続人の収入や家庭事情、社会的地位などにより決せられ、通常は親の社交儀礼ないし扶養義務の範囲内に属するものとして、特別受益に該当しないと解されています。
裁判例のなかには、挙式費用も特別受益となりうるが、他の共同相続人も挙式費用などを出してもらっている場合には、特別受益にあたらないとしたものもみられます。