相続分解説/超過特別受益者
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相続分がない旨の証明書
共同相続人中に超過特別受益者がいる場合には、登記原因証明情報として、相続を証する戸籍・除籍全部事項証明書(戸籍・除籍謄本)などの戸籍関係書類または法定相続情報一覧図の写しのほか、超過特別受益者が作成した相続分がない旨の証明書(いわゆる特別受益証明書。印鑑証明書付き)を提供して、その者を除く他の共同相続人から相続による所有権移転の登記を申請することができます。
登記実務上、相続分がない旨の証明書の内容は、被相続人から相続分に等しいか、またはこれを超える財産の贈与もしくは遺贈を受けているため具体的相続分がないことを証するものであれば足ります。受贈財産の種類や価額、受贈年月日などを具体的に記載することを要しないとされています。
相続分がない旨の証明書は特別受益者自らが作成することを要しますが、特別受益者であるAが相続登記前に死亡した場合には、Aの相続人全員が作成した「Aは被相続人から特別受益を受けており、相続する相続分がない」旨の証明書を提供して相続登記をすることができます。
また、相続分がない旨の証明書は、一種の事実証明ですので、共同相続人の一人である親権者がその親権に服する未成年の子について、相続分がないことを証明することは、民法826条所定の利益相反行為に該当しないと解されています。
- 民法第826条
- 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
- 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
相続分がない旨の証明書の問題点
相続登記の申請にあたって、登記原因証明情報として提供された相続分がない旨の証明書の内容が事実に合致し、かつ、作成者本人の真意にもとづくものであれば、特に問題はありません。
しかし、特定の相続人が相続不動産を単独取得する方法、あるいは相続放棄の申述手続きを回避する手段として、他の共同相続人が生前贈与を受けたとして、相続分がない旨の証明書を作成して提出する例も少なくないといわれています。
相続分がない旨の証明書の作成・交付は事実行為と解されていますので、裁判例には相続分がない旨の証明書に記載された贈与の事実がなかった以上、相続持分を失うものではなく、また贈与の意思表示と認めることもできないとしたものがあります。
しかし、特別受益の事実がないのに相続分がない旨の証明書が作成された場合においても、これをただちに無効とせず、本人の真意にもとづくかどうかと判断基準とし、その作成・交付に至る経緯、証明書に関する理解度などの諸事情を総合的に検討したうえで、当該相続人が相続財産の分配を受けないという意思表示をしたものと認められるときは、持分権の放棄は贈与または遺産分割協議の成立を肯定するのが裁判例の傾向です。
他方、同様の立場から当該証明書の意味内容につき十分に意識していなかった場合や、作成名義人によって真正に作成されたものか疑わしい場合には、これを否定したものも少なくありません。
登記手続き上、当該証明書に生前贈与などを受けたため、相続分がないという事実が記載され、かつ、印鑑証明書の添付により形式的な申請が担保されている以上、登記官としては当該申請を受理すべきものといえましょう。