相続分解説/寄与の主体(寄与分の請求権者)
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寄与分の請求者について
① 子が相続人である場合に、特別な寄与をしたと認められる被相続人の兄弟姉妹は、寄与分の請求ができるでしょうか。
相続人ではない兄弟姉妹のなかに特別の寄与をしたと認められるものがあっても、寄与分を受けることはできません。当該兄弟姉妹が、特別の寄与者に該当すると認められるとき(民法1050条)相続人に対し、特別寄与料の支払いを求めることができます。
② 相続人の妻子が特別の寄与をしたと認められる場合に、寄与分を請求することはできるでしょうか。
被相続人の妻子の寄与が、実質的に当該相続人の寄与と同視できるときは、当該相続人の寄与分として考慮することができると解されています。
なお、当該妻子が、特別の寄与者に該当すると認められるときは、相続人に対し、特別寄与料の支払いを求めることができますので、いずれかを任意に選択できるか否かについては、今後の議論に注目する必要があるといわれています。
寄与分を受けることができる者
寄与分を受けることができるのは、共同相続人のなかで、被相続人の財産の維持または増加について、特別の寄与をした者でなければなりません。
寄与分は、遺産分割における相続分の修正要素として位置付けられていますので、寄与分を受けることができる者は、現実に遺産分割に参加することができる相続人に限られます。
したがって、相続欠格者や被廃除者、相続放棄者には寄与分は認められません。また、包括受遺者は、相続人と同視されますが、相続人ではありませんので寄与分は認められません。
相続人以外の者への寄与
寄与分を受けることができるのは相続人に限られますので、第一順位の子がある場合において、相続人とはならない直系尊属や兄弟姉妹のなかに被相続人の財産の維持・増加について、特別の寄与をしたと認められるものがあったとしても、それらの者は寄与分を請求することはできません。
もっとも、平成30年改正により新設された民法1050条は、被相続人に対して、無償で療養看護その他の労務の提供により、被相続人の財産の維持または増加について、特別の寄与をした相続人以外の親族は、相続開始後、相続人に対し、特別寄与料の支払いを請求することができる旨を規定しています。
相続人の妻子による寄与
相続人の妻子は相続人そのものではありませんので、これらの者の寄与は、民法の規定する「特別の寄与」にあたりません。
したがって、相続人の妻子が自己の寄与分を主張することは許されませんが、これらの者の寄与が、実質的に当該相続人の寄与として評価できる場合があります。
当該相続人の寄与分として、考慮することを積極に解した裁判例として、次のようなものがあります。
- 申立人の妻による看護は、申立人の補助者または代行者としてされたものであるから、その寄与分として考慮されるとしたものがあります。
- 脳梗塞の後遺症が残る被相続人を介助した相続人の妻子の行為は、相続人の履行補助者的立場にあるものの無償の寄与であり、当該相続人の寄与にあたるとしたものがあります。
平成30年改正により新設された民法1050条は、特別の寄与をした被相続人の親族につき、相続人に対し、特別寄与料の支払いを請求することができる旨を規定しています。
そこで、相続人の妻子の寄与が評価される方法としては、第一に、相続人の妻子を当該相続人の履行補助者などとして構成し、当該相続人の寄与分としてその寄与を考慮してもらう方法があります。
また、第二に、当該相続人の妻子自身が民法規定の特別の寄与者として相続人に対し、特別寄与料の支払いを請求する方法が考えられます。
被代襲者または代襲者による寄与
被代襲者の寄与につき、通説および多くの裁判例は、被代襲者の死亡による代襲相続の場合には、代襲者は、被代襲者の寄与を自己の寄与分として、主張することができるとしています。
他方、被代襲者の相続欠格または廃除による代襲相続の場合には、被代襲者の相続権自体を失わせているのに相続権の範囲を修正する付随的要素である寄与分を認めるのは、自己矛盾であるなどとして消極に解されています。
次に、代襲者自身の寄与についても、遺産分割時に相続人の資格を有していれば足りるから、代襲原因発生の前後を問わず主張することができると解されていますが、代襲原因発生後の寄与についてのみ、請求できるとする考え方もあります。