相続対象及び効力解説/相続財産の範囲
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
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相続財産性が問題となるものとして、各種検討いたします。
占有権
所有権や一般の制限物件(用益権、担保権)が相続の対象となるのはもちろんですが、占有権については問題があります。
占有権が、目的物の現実的支配を基礎として成り立っていることを重視すると、相続開始後、相続人がただちに被相続人と同様の事実上の支配をすることは困難ですから、占有権の相続性を肯定することは難しいとも考えられます。
しかし、判例・通説とも、被相続人の事実的支配のなかにあった物は、当然に相続人の支配のなかに承継されるとみるべきであるから、相続が開始したときは特別の事情がない限り被相続人の占有に属していたものは、相続人の占有に移ると解すべきであるとしています。
借家権(建物賃借権)
不動産賃借権の一つである借家権は原則として、相続の対象となりますから、借家人であった被相続人と同居していた配偶者や子は、家主(賃貸人)から被相続人(賃借人)の死亡を理由に明け渡し請求があった場合には、これを拒否することはできます。
問題は、被相続人と同居していた内縁の配偶者や事実上の養子などの同居非相続人に対し、家主または被相続人の相続人から明け渡し請求があった場合、これを拒否することができるかどうかという点です。
まず、家主からの請求について、判例は借家権は相続人に相続されるとしたうえで、家主からの明け渡し請求に対しては、内縁の配偶者などは、借家人たる被相続人を中心とする家族共同体の一員として、相続人が承継した借家権を自己のために援用して、これを拒否し、居住を継続することができるとしています。
判例は、事実上の養子、内縁の妻、内縁の夫につき、この趣旨を認めています。
次に、借家権を承継した相続人からの明け渡し請求については、内縁配偶者などに居住権は認められないものの、具体的事情に応じ、権利の濫用として明け渡しを拒否することはできる場合があります。
さらに、借家人が相続人なくして死亡した場合には、借地借家法36条において被相続人と事実上の夫婦または養親子の関係にあった同居者が、権利義務を承継すると規定して居住権の保護がはかられています。
なお、公営住宅法の適用を受ける公営住宅の使用権については、相続の対象とはなりません。住宅地区改良法にもとづく改良住宅についても同様です。
ちなみに、判例は、内縁の夫婦が、その共有不動産を居住または共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者間に一方の死亡後は他方がこれを単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当であるとして、生存内縁配偶者に共有不動産の全面的な使用を認めています。
保証債務
民法の保証債務は、主債務者・保証人間の人的信頼関係を基礎とするため、その相続性が否定される余地もあります。
しかし判例通説は、金銭消費貸借上の保証債務や貸貸借上の保証債務など一般の保証債務(連帯保証を含む)については、相続によって当然承継されるとしています。
これに対し、身元保証や包括的信用保証など特に個人的な信頼関係にもとづき広範囲の内容不確定の責任を負うものについては、原則としてその相続性が否定されています。
ただし、身元保証などにもとづき相続開始時にすでに発生していた損害賠償債務や特定の保証債務などは相続されます。
個人根保証契約は、主たる債務者または保証人の死亡により、主たる債務の元本が確定するものとされ、被相続人死亡後の債務については、相続人は保証債務を負わないこととされています。