相続対象及び効力解説/損害賠償請求権・契約上の地位
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生命侵害に対する損害賠償請求権
一般に、不法行為や債務不履行による損害賠償請求権も、いったん発生すれば、通常の金銭債権として相続されます。
被害者が即死した場合の損害賠償請求権につき、判例は被相続人は自己の生命侵害による財産的損害(逸失利益)にかかる損害賠償請求権を取得し、相続人は、これを相続すると解しています。
他方、財産的損害以外の損害賠償請求権(慰謝料請求権)の相続性について最高裁判所は、次のように述べています。すなわち、ある者が他人の故意過失によって財産以外の損害を被った場合には、その者は損害の発生と同時に慰謝料請求権を取得します。そして、これを放棄したと解しうる特別の事情がない限り、この行使をすることができます。したがって、相続人は当然に慰謝料請求権を相続するものと解するのが相当です。
各種契約上の地位
各種契約上の地位は、原則として相続されます。たとえば、被相続人が生前に所有不動産を売却したとすれば、相続人は、売主としての担保責任を負うほか、所有権移転登記の義務などを承継します。
債権譲渡人としての通知義務、時効の援用や時効利益の放棄をし得る地位、二重売買における売主の地位なども一般に承継されます。
委任契約上の地位や代理人など個人的信頼関係を基礎とする継続的法律関係は、一身専属的なものが多いとされています。
しかし、すでに発生している個別具体的な権利義務は、相続の対象となります。また、判例は、自己の葬儀や埋葬などに関する死後事務委任契約も可能であり、当該契約は委任者の死亡によっては、終了しないとしています。
無権代理関係
たとえば、子が父親の実印を勝手に持ち出し、父親名義の委任状を作成して、金銭消費貸借や連帯保証契約を無権代理するケースが生じたとします。
このような無権代理行為が行われると、本人は追認権または追認権拒絶を有します。他方、無権代理人は本人の追認がなければ、善意無過失の相手方に対して、履行または損害賠償の責任を負うことになります。本人と無権代理人との間に相続関係が生じた場合は、問題があります。
本人が死亡して無権代理人が相続した場合
本人が死亡して無権代理人が単独相続した場合(前記説例で、父親が死亡して子が相続した場合)について、判例は、本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位が生じたことにより、当該契約は当然に有効となるとしています。
他方、無権代理人が他の共同相続人とともに相続した場合、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は無権代理人の相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではないとしています。
したがって、他の共同相続人が追認を拒絶したときは、相手方は無権代理人に対し、民法117条の責任(履行または損害賠償)を追及すべきことになります。
- 民法第117条
- 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
- 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
- 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
- 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
- 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
無権代理人が死亡して本人が相続した場合
無権代理人が死亡して、本人が単独相続した場合(前記説例で子が死亡して、父親が相続した場合)には、相続人である本人が、被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても信義則に反するとはいえず、当該無権代理行為は本人の相続により当然に有効になるものではありません。
しかし、無権代理人と本人の資格が併存することになりますので、本人としての地位にもとづき追認を拒絶できるものの、相続により承継した無権代理人としての民法117条の責任(履行または損害賠償)を逃れるものではありません。