相続対象及び効力解説/相続の効力
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共同相続と遺産共有
民法は、相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属するとし、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継すると定めています。この状態は、遺産共有といわれます。
相続人が数人の場合でも、①損害賠償債権のような可分債権、あるいは可分債務は、相続開始と同時に、分割単独債権・債務として各共同相続人に帰属します。
②特定財産承継遺言の目的物も、相続開始と同時に、特定の相続人の単独所有または数人の物件共有に帰属します。
③特定遺贈や死因贈与の目的物も、ただちに受遺者や受贈者に権利が移転しますから、遺産共有という意味における相続財産からは、離脱することになります。
共同相続の効力について、民法898条は次のように規定しています。
- 民法第898条
- 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
- 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。
民法898条にいう「共有」の法的性質については、学説上、共有説と合有説とのあいだに議論がありました。
判例は、はやくから、共同相続人が相続財産を共同所有する法律関係は、民法249条以下の通常の共有としての性質を有するものと解するのが相当であるとして、一貫して共有説を採用しています。
たとえば、最高裁判所判例昭和50年11月7日は次のように判示しています。
「共同相続人が、分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法249条以下に規定する共有としての性質を有すると解するのが相当であって、共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産について、同人の有する共有持分権を譲り受けた第三者は、適法にその権利を取得することができ、他の共同相続人とともに右不動産を共同所有する関係に立つが、右共同所有関係が民法249条以下の共有としての性質を有するものであることは言うまでもない」
- 民法第249条
- 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
- 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
- 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
物件の場合
不動産や動産の所有権を共同相続した場合、共同相続人間の共有となり、遺産分割の対象になります。
この共有については、物権法上の共有としての性質を有すると解されていますので、各共同相続人は、遺産分割前の遺産中の不動産や動産の共有持分を譲渡することができます。
一方、担保物件を相続した場合には、準共有になると解されますが、担保物権自体は独立して遺産分割の対象とはならず、被担保債権の帰属にしたがいます。
債権・債務の場合
不可分債権
相続債権が、特定の自動車や不動産の引き渡し請求権のような不可分債権である場合には、共同相続人全員に不可分的に帰属することになります。
債権者である共同相続人は、共同してまたは各人が全員のために全部の履行を請求することができます。
判例上、不可分債権とされたものとして、①土地所有権にもとづく建物収去・土地明渡請求権、②使用貸借契約の終了を原因とする家屋明渡請求権などがあります。
不可分債務
不可分債務の場合、たとえば特定の不動産の引き渡し義務のように、被相続人の債務がその性質上不可分であるときは、その共同相続人が承継するのも不可分債務であることに変わりはありません。
したがって、共同相続人は各人が全部について履行する義務を負い、債権者は、共同相続人の一人または全員に対して、全部の履行を請求することができます。
判例上、不可分債務とされたものとして、①第三者の不動産を取得して譲渡すべき義務、②不動産売買の売主についての所有権移転登記義務、③農地の売買につき売主が負担する農地法所定の許可申請手続き協力義務、④家屋明渡義務、⑤賃貸借契約上の賃貸物を使用収益させる義務などがあります。