相続対象及び効力解説/共同相続財産の管理
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概説
相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属するものとされ、この場合の法律関係は民法249条以下の共有としての性質を有するものと解されています。したがって、相続開始から遺産分割までのあいだの共同相続財産の保存、管理および変更については、原則としてこれらの共有に関する規定が適用されます。
すなわち、令和3年改正による共有物の管理、変更などに関する見直し後の規律を含め、遺産共有についても特別の定めがない限り民法249条以下に規定する共有物の保存、管理行為および管理に関する手続き、共有物を利用する者と他の共有者との関係、共有物の変更に関する規律などが適用されることになります。
相続財産について、共有に関する規定を適用するときは、民法900条から902条の規定により算出した相続分(法定相続分または指定相続分)をもって、各共同相続人の共有持分とするとされています(民法898条2項)。
- 民法第900条
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
- 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
- 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
- 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
- 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
- 民法第901条
- 第887条第2項又は第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
- 前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
- 民法第902条
- 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
- 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
所有者不明土地
令和3年改正では、共有関係の見直しとともに、所有者不明土地管理命令の制度が創設されました。
所有者不明土地管理命令
この制度は、①所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地または建物あるいは、②土地または建物が数人の共有に属する場合において、共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地または建物の共有持分を対象とします。
利害関係人の請求により、裁判所が所有者不明土地管理人または所有者不明建物管理人を選任して、その管理を命ずるものです。
たとえば、土地の登記名義人が死亡しているが相続人の存否が不明である場合や、登記名義人の住所が明らかでない場合などに利用することができます。
この管理命令があった場合には、裁判所書記官は職権でその対象とされた土地もしくは建物または共有持分について、所有者不明土地管理命令または所有者不明建物管理命令の登記の嘱託をしなければなりません。
管理命令にかかる土地・建物の管理処分権は、選任された管理人に専属し、保存行為や利用改良行為の範囲を超える行為(土地・建物の譲渡など)については、裁判所の許可を要します。
また、管理命令は、特定の土地・建物に係るものですので、たとえば管理人は遺産分割への参加はできません。
管理不全土地管理命令
所有者による土地・建物の管理が不適当であることによって他人の権利または、法律上保護される利益が侵害され、または侵害されるおそれがある場合に、利害関係人の請求により裁判所が、管理不全土地管理人または管理不全建物管理人を選任して、その管理を命ずる制度です。
制度施行にともなう不動産登記事務の取扱い
上記制度の施行にともなう、不動産登記事務の取扱いについては、民事局長の通達があります。
たとえば、所有権登記名義人が死亡し、相続登記未了の土地、または共有持分につき所有者不明土地管理命令がされたときは、管理命令の登記をする前提として、相続登記をする必要があることとされています。