相続対象及び効力解説/法定相続分の権利承継と対抗要件
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
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事例
設問
甲が死亡し、その後A B Cが共同相続人となった場合(遺言はない)、相続不動産につき、Aが無断で単独名義の相続名義をしたうえ、第三者に譲渡して所有権移転の登記を経由したときは、BおよびCは相続による持分の取得を当該第三者に対抗することができるでしょうか。
回答
A単独名義の登記は、Aの法定相続分を超える部分については無権利であって、登記には公信力がない以上、当該第三者が善意であったとしても、Aの法定相続分を超える部分についての登記は無権利であるというべきであるから、BおよびCは自己の持分を登記なくして、当該第三者に対抗することができます。
1. 相続財産に属する不動産につき、単独所有権移転の登記をした共同相続人のなかの乙ならびに乙から単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は、自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきです。
2. なぜなら、乙の登記は甲の持分に関する限り、無権利の登記であり、登記に公信力なき結果、丙も甲の持分に関する限り、その権利を取得する理由はないからです。
※公信力とは・・・ある制度や表示の外観を信頼して取引をした人を保護するために、たとえその外観が事実と異なっていても、外観が真実であるかのように法的な効果を認める力のことです。
相続財産に属する不動産
相続が開始すると、遺言がなければ、相続財産に属する不動産は遺産分割までのあいだ共同相続人の共有に属し、各相続人は個々の不動産につき、法定相続分に応じた共有持分を持つことになります。
そして、この段階で、当該不動産につき相続による相続移転の登記をする場合には、各共同相続人の法定相続分に応じた持分による登記が行われます。
平成30年改正後の民法899条の2は、法定相続分を超える部分については、対抗要件主義を採用しました。
- 民法第899条の2
- 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
- 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
しかし、遺産分割や特定財産承継遺言などにより、特定の不動産を承継した受益相続人は、遺産分割や遺言がなくても法定相続分に該当する部分は当然承継しますから、この部分について、権利の競合すなわち対抗問題が生じることはありません。
競合を生じる余地があるのは、法定相続分を超える部分に限られます。法定相続分による権利の承継と対抗問題に関する従来の考え方に変わりはありません。
遺産の分割と登記
遺産の分割は、相続開始のときにさかのぼってその効力を生じますが、第三者に対する関係においては、相続人が相続によりいったん取得した権利につき、分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものです。
よって、動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については本条の適用があります。
したがって、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記をえなければ、分割後に当該不動産につき、権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することはできません。



