相続対象及び効力解説/法定相続分超過の権利承継
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総説
民法899条の2第1項は「相続による権利の承継は遺産の分割によるかどうかかかわらず、次条および第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができない」と規定しています。
ここにいう「第三者」とは、民法177条に関する確立した判例と同様、登記などの対抗要件の具備がない旨の主張することについて、正当な利益を有する第三者をいいます。
- 民法176条は、物件の設定・移転における当事者間の関係を定めています。すなわち、物件の設定・移転は当事者の意思表示のみによってその効力を生じます。
- 民法177条は、不動産に関する物権変動の対抗要件として登記を要求しています。これは、物件の得喪・変更における当事者とこれに関与しない第三者との関係を定めています。
- 両者はまったく異なる関係を規定するものですから、177条の規定は不動産に関する176条の意思表示による物件の設定・移転の場合に限って適用されるものではありません。
- 家督相続のように、法律の規定によって物権変動が生じる場合にも適用され、その物権変動を第三者に対抗するためには登記をする必要があります。
法定相続分超過の不動産上の権利承継
これまで判例は、相続財産に属する不動産にかかる権利の承継について、遺産分割による場合には、法定相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を備えなければ分割後に当該不動産にかかる権利を取得した第三者に対し、法定相続分を超える権利の取得を対抗することができないとしていました。
他方、相続分の指定または相続させる遺言による権利の承継については、登記なくして第三者に対抗することはできると解してきました。
しかし、判例の立場を前提とすると、遺言がある場合には、被相続人に対して権利を有し、または義務を負っているものの法的地位が不安定となります。
また、遺言の内容を知り得ない第三者の取引の安全が害されるおそれがあること、遺産分割や遺言による権利の承継は、いずれも意思表示によるものであることなどの問題点が指摘されてきました。
平成30年改正後の民法899条の2第1項は、これらの点を考慮して、相続による権利の承継であっても登記などの対抗要件を備えなければ、法定相続分を超える部分について第三者に対抗することはできないこととしたものであると説明されています。
したがって、平成30年改正法の施行日以後の開始した相続による不動産上の権利の取得については、それが遺産分割による場合はもちろん、相続分の指定や特定財産承継遺言による場合も取得した権利の全体についての登記を備えなければ、法定相続分を超える部分について第三者に対抗することができません。
不動産に関する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法177条の適用があります。
したがって、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができません。
- 民法第176条
物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
- 民法第177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。



