わかる相続/代償分割と贈与
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被相続人甲の共同相続人がAとBである場合に、AとBとの遺産分割協議により、Aが甲不動産を相続する代わりに、Aが本件相続開始以前から所有している乙不動産を、AからBに所有権を移転するという内容で合意が成立しました。このような合意は有効でしょうか。また、有効とした場合には、どのように登記手続きをするべきか問題になります。
これは、代償分割の問題です。代償分割とは、共同相続人または包括受遺者のうちの一人または数人が、相続または包括遺贈により取得した財産の現物を取得し、その現物を取得した者が他の共同相続人または包括受遺者に対して、債務を負担する分割の方法をいいます。
これを本例でいえば、Aが甲不動産を取得する代わりに、Bに対してA所有の乙不動産を移転する債務を負担する分割の方法です。負担する債務は金銭債務の場合も多いようです。
家事事件手続き法195条は、「家庭裁判所は遺産の分割の審判をする場合において、特別の事情があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の一人または数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割にかえることができる。」と定めています。
ここでいう「特別の事情」がいかなるものかについては、法律は規定していません。しかし、大阪高等裁判所決定昭和54年3月8日は「特別の事情」とは、①相続財産が、農業資産その他の不動産であって細分化を不適当とするものであり、②共同相続人間に、代償金支払いの方法によることにつき争いがなく、③当該相続財産の評価額が、概ね共同相続人間で一致していること、④相続財産を承継する相続人に、債務の支払い能力がある場合に限るとしています。
先例は、共同相続後、金銭に代わり遺産分割の方法として、相続人中の一人の固有財産を他の相続人に与えることを含めてされた遺産分割協議書を提供して、相続人中の一人の固有財産を他の相続人に与える所有権移転登記の登記義務を、「遺産分割による贈与」とする申請は、受理できるとしています。
なお、登記原因が「遺産分割による贈与」の場合は無償の譲渡であるが、有償の譲渡である場合は「遺産分割による売買」となります。譲渡の原因が、無償か有償か判明しない「遺産分割による代償譲渡」は、登記の申請が受理されません。
相続農地について、遺産分割による所有権の移転については、農地法所定の許可を要しません。しかし、代償分割により被相続人Aの固有財産を、他の相続人Bに贈与することは、被相続人の遺産の分割とは、同視できません。(「遺産分割による贈与」については、通常の遺産分割と異なり、第三者の許可があったことを証する情報として、農地法所定の許可証を提供しなければなりません。)
「遺産分割による贈与」を内容とする遺産分割協議書についての一例です。
被相続人甲は、令和4年◯月◯日死亡したので、その相続人全員は、被相続人の遺産を次のように分割することについて、協議が成立した。
1次の不動産はAが取得する。
越谷市浅間台西◯丁目◯番◯号、の土地
2次の預金はAが取得する。
◯銀行 ◯支店 普通預金 口座番号XXXXXX
3相続人Aは一項および二項の遺産を取得する代償として、相続人Aが所有する次の不動産を本日Bに贈与する。
越谷市浅間台東◯丁目◯番◯号、の土地
上記の通り、遺産分割の協議が成立したので、これを証するためこの証書を3通作成し、各自押印署名して各一通を所持する。
令和4年◯月◯日
◯市◯町◯丁目◯番◯号
相続人A 印
◯市◯町◯丁目◯番◯号
相続人B 印
◯市◯町◯丁目◯番◯号
相続人C 印