わかる遺言・遺贈/相続分の指定
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
本ページは、遺言の解説です。遺言についてお困りの際は、無料相談も承っておりますのでお問い合わせください。
被相続人は、遺言で、共同相続人の相続分を定めることができ、あるいは相続分を定めることを第三者に委託することができます。相続分の指定といい、指定された相続分を指定相続分といいます。相続分の指定または相続分を定めることの第三者委託は、必ず遺言によってしなければなりません。この第三者がする指定行為は、なんらの方式を必要としません。
相続分の指定は、遺留分に関する規定に違反することはできません。遺留分に関する規定に違反する相続分の指定は、当然に無効とされるものではなく、侵害を受けた遺留分権利者の、減殺請求に服するのみとするのが通説です。
相続分の指定は、遺産の二分の一とか三分の一とかの、相続財産全体に対する分数的割合で表すことが多いようです。しかし、建物、有価証券などのように、相続財産の種類を指定しても、また、特定の遺産を個別的に指定しても、それにより相続財産全体に対する相続すべき割合が指示されている限り、相続分の指定と解されています。
なお相続分の指定がされた場合に、相続債務も相続分の指定の割合にしたがって相続されるかについては、相続債権者は相続分の指定の割合に拘束されることなく、法定相続分による債務の負担を請求することができるとするのが通説です。
相続分の指定をした自筆証書遺言の例です。
遺言書
私、越谷太郎は、次のように遺言する。
1遺言者は、次の通り、各相続人の相続分を指定する。
妻 越谷千子(昭和◯年◯月◯日生) 三分の一
長男 越谷間一(平成◯年◯月◯日生) 三分の一
長女 越谷台子(令和◯年◯月◯日生) 三分の一
令和◯年◯月◯日
越谷市千間台南7丁目◯番地
遺言者 越谷太郎 印
(注) 自筆証書遺言の例です。遺言者が、遺言書の全文、日付および氏名を自書し、印鑑を押さなければなりません。印鑑については制限がありません。
被相続人が、共同相続人中の一人、もしくは数人の相続分のみを定め、またはこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、民法の規定により定められます。すなわち法定相続分および代襲相続人の相続分です。
たとえば、「他の相続人」に被相続人の配偶者が含まれていない場合において、相続分の指定が共同相続人A・B・C中のAだけについて相続分の指定が三分の一となされているときは、残りの三分の二をBとCとで法定相続分(代襲相続の場合は代襲相続人の相続分)にしたがって分けることになります。
これに対して、「他の相続人」に被相続人の配偶者が含まれている場合において、被相続人の子の一人が相続分の指定を受けたときは、①配偶者の法定相続分に影響を及ぼさないとする説と、②配偶者の法定相続分に影響を与えるとして、指定相続分を受けた相続人を廃除して算出した法定相続分の割合で取得するように算出すべきとする説とが対立しています。
遺言で相続分の指定があった場合において、遺言の効力が生じたときは、共同相続人全員は遺言による相続分の指定にしたがって遺産分割を行うことになります。 この場合の登記手続きは次の①または②によります。
① 遺言による相続分の指定にしたがって遺産分割がなされたときは、被相続人(遺言者)から当該不動産を取得した相続人に直接「年月日相続」を登記原因とする、所有権移転登記をすることができます。通常は、この方法によることが多いです。
② 遺産分割前に指定相続分による共同相続登記をしたうえで、遺産分割後に当該不動産を取得した相続人に「年月日遺産分割」を登記原因とする、他の共同相続登記名義人から持分全部移転登記をすることができます。