遺言効力の発生時期
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
本ページは、遺言の解説です。遺言についてお困りの際は、無料相談も承っておりますのでお問い合わせください。
- 民法第985条1項
遺言は、 遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
遺言は、遺言者が遺言の意思表示をしたときに成立しますが、遺言としての効力が発生するのは遺言者が死亡したときからです。
いつでも遺言者が自由に撤回できます。そのため、遺言者が死亡したそのときまで、その効力が生じません。
したがって、将来、遺言者が死亡した場合に問題となる「遺贈」について、法律関係の不存在確認を求める訴えはできません(最高裁判例昭和31年)。
受遺者(遺贈によって相続受ける人)とされる者の地位は、確認の訴えの対象となる権利に該当しないのです(最高裁判例平成11年)。
効力発生に一定の手続を要する場合
遺言には、遺言者の意思の他に、一定の手続きを必要とするものがあります。その場合には、通常なら遺言者の死亡と同時に発生する効力が発生しないことになります。
たとえば、財団法人の設立です。公証人の認証が必要な定款の作成があるため、遺言者死亡と同時に法人は成立しません。
生前認知の場合は、戸籍届により効力発生します。遺言認知の場合には、遺言執行者(遺言内容を執行する人)が就職の日から10日以内に、届出をしなければなりません。その場合の遺言の効力の発生はどうなるでしょうか。
この場合、2通り考えられます。
- 認知は、遺言者死亡のときに効力が生じ、戸籍届は報告的届出とする考え
- 認知は、戸籍届の受理により効力が生じ、創設的届出とする考え
一般的には、遺言者死亡のときに効力が発生すると解釈されているようです。
相続人の廃除、その取消しを、遺言でする場合があります。この場合、遺言執行者が、家庭裁判所に審判申立手続をとり、審判があるまでは、廃除の効力や取消しの効力は発生していません。
審判があれば、その効力は遺言者死亡の時まで遡ることになります。
停止条件付遺言
- 民法第985条2項
遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
停止条件とは、遺言者の死亡後に条件を満たしたときに効力が生じます。条件が満たされない間は、法律効果が停止しているということです。
停止条件付遺言の条件が、遺言者が死亡する前に満たされた場合には、無条件の遺言となります。
- 民法第908条
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
遺言効力の始期または終期を付することが許される内容であれば、始期付または終期付遺言も可能ですが、遺産分割禁止に関する遺言については、遺言者の死亡後5年を超える終期を付することができません。
遺贈の効力の発生時期・遺贈の効力と対抗要件の具備
遺贈の目的物が特定物や特定の権利なら、原則として当然に物権的に権利が受遺者に移転します(判例・多数説)。
遺贈の効力発生と同時に、受遺者(遺贈によって相続受ける人)は権利者となります。その結果、相続人が遺贈の目的物に相続登記をしていれば、受遺者としての権利に基づき、その抹消請求をすることができます。
不特定物が遺贈の目的とされたときは、遺贈義務者(遺贈を履行する義務を負う人)は、それを受遺者に移転する債務を負います。そして、特定物に転化した時に、権利は受遺者に移転します。
なお、農地の遺贈のように、権利移転のために知事の許可を受けなければならないときは、遺贈義務者は許可の申請をする必要があります。許可を得て、はじめて権利移転の効力が生じます(最高裁判例昭和30年)。
不動産の受遺者は、遺贈の登記をしなければ、第三者に対抗することができません(最高裁判例昭和39年)。つまり「自分の不動産である」と主張できないということです。
遺贈と相続で、甲不動産を相続人Aに「相続させる」という遺言がありました。
相続人Aは、他の相続人Bの法定相続分を差し押さえた債権者に登記がなくても、自分の不動産と主張できるとの判例がでました。