わかる遺言・遺贈/遺産分割方法の指定
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
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被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託し、または、相続開始のときから5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができます。
遺産分割方法の指定の本来の意味は、遺産の分割につき、現物分割(遺産を現物で分ける)か価額分割(競売で換価して、その価額で分割する)か代償分割(遺産を相続人の一人に相続させて、その代償として金銭などを他の相続人に与える)かについて、いずれの分割方法によるかを、被相続人自ら遺言によって指定できるとするものです。
この本来の意味における遺産分割方法の指定があった場合には、共同相続人が具体的な相続財産を取得するためには、さらに遺産分割が必要です。ところで、遺産分割方法の指定の解釈については、さらに、甲財産をAに、乙財産をBにという遺産分割の実行の指定を含むものと解釈されるにいたっています。
遺産分割方法の指定は、全部の遺産または共同相続人の全員について行われる必要はなく、一部についての指定でも差し支えありません。この場合、残余の部分については、遺産分割協議その他の方法によって分割することになります。
特定の遺産を特定の相続人に相続させる(たとえば、甲財産をAに、乙財産をBに相続させる)という遺言があった場合、遺産分割協議をしないで直ちに「年月日相続」を登記原因として所有権移転登記ができるか否かにつき登記実務は「年月日相続」を登記原因とする所有権移転登記をすることができるとしています。
最高裁判所の判決は、この登記実務の取扱いを肯定し、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか、または遺贈と解すべき特段の事情がない限り、当該遺産を当該相続人に単独で相続させる遺産の分割の方法が指定されたものと解すべきであり、特段の事情がない限り、なんらの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡のときに直ちに相続により承継されるとしています。
この判決の見解によれば「相続させる」趣旨の遺言がなされたときは、当該不動産を相続した相続人が、自ら相続登記の申請ができることになります。したがって、登記の申請を司法書士などの代理人によって行う場合には、遺言執行者の登記申請委任状ではなく、代理人は、当該不動産を相続した相続人から委任状の交付を受けることになります。
共同相続登記がされていない場合において、「相続させる」趣旨の遺言書にもとづく登記は、「年月日相続」を登記原因として所有権移転登記を申請します。もし、遺言書に後者の定めがあっても、遺言執行者ではなく相続人から登記の申請をすることができます。
その場合の添付情報は次の通りです。
① 登記原因証明情報
遺言書、遺言者が死亡したことを証する情報(除籍・戸籍謄抄本)、相続人の戸籍謄抄本です。申請人ではない他の共同相続人の戸籍謄抄本は必要ありません。遺言書は、公正証書の場合を除き家庭裁判所の検認を受けたものであることを要します。
② 被相続人の除住所証明書、相続人の住所証明書
③ 代理人によって登記の申請をするときは、代理人の権限を証する情報
前述のとおり「相続させる」趣旨の遺言がなされた場合には、当該不動産の所有権は、被相続人の死亡のときに直ちに相続により承継されるとして、遺言書に遺言執行者の指定があるときでも当該相続人が所有権移転登記の申請をすることになります。 このような場合には、遺言執行者は、遺言の執行として相続の登記申請手続きをする義務を負うものではありません。
しかし、遺言で指定された特定の相続人甲への所有権移転登記がされる前に、他の相続人が当該不動産につき自己名義の所有権移転登記を経由したため、遺言の実現が妨害される状態が出現したような場合には、どのように対処すべきでしょうか。この場合、遺言執行者は、遺言執行の一環としてこの妨害を廃除するため、所有権移転登記の抹消登記手続きを求めることができます。さらには、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを求めることもできます。