墳墓・葬式・香典などの相続
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
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民法896条によって、被相続人の死亡で被相続人のすべての権利義務が、相続人に相続されます。
- 民法第896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
民法第897条では、祭祀財産についての特別な規定があります。
- 民法第897条
- 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
- 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
祭祀財産
祭祀財産とは
系譜とは、家計図、過去帳など、祖先以来の系統を示すものです。
祭具とは、位牌、仏壇、仏具、神棚など、祭祀・礼拝の用に供するものです。
墳墓は、墓石、墓碑だけでなく、その所在する土地(墓地)の所有権や墓地使用権を含むものです。
祭祀財産の承継者
祭祀財産は、“祭祀を主宰すべき者”が承継します。
祭祀を主宰すべき者とは、被相続人の指定で決定します。指定がないときは、地域の慣習にしたがった者を決定します。被相続人の指定もなく、慣習も不明で定まらないときは、家庭裁判所の審判で決定します。
祭祀を主宰すべき者は、必要とする資格や制約はなく、さらに相続人か否か親族関係か否か、氏の異同など問わないとされています。(大阪高裁決定昭和24年10月29日)
通常、祭祀主宰者は一人(仙台家裁審判昭和59年10月15日)ですが、特段の事情があれば、2人を共同の祭祀主宰者とすることも認められています。
系譜、祭具、墳墓の承継者を、それぞれ別の主宰者とすることも認められています(東京家裁審判昭和42年10月12日)。
祭祀財産承継者の問題
被相続人が祭祀承継者を指定する方法は何でもよいとされています。生前行為、遺言、書面、口頭、明示、黙示を問わず、どのように決定してもよいのです。
祭祀承継者が、慣習によって決定するという場合、その慣習は被相続人の住所地の慣習をいいます。しかし、出身地や職業に特有の慣習があれば、それが慣習とされます。
家庭裁判所が指定する際は、被相続人を総合的に判断して決定されます。
たとえば、被相続人との身分関係、過去の生活関係・生活感情の緊密度、承継者の祭祀主宰の意思や能力、利害関係人の意見などです(大阪高裁決定昭和59年10月15日)。
祭祀は、死者への愛情、感謝の心情からなされるものです。血縁よりも、実際上こうした心情をより強く有する者を選ぶべきとされています。「生前に、父と生計を異にしていた長男らでなく、父と同居しともに農業に従事した次女」を選んだ名古屋高裁決定昭和37年4月10日の判例があります。
相続人の合意により承継者を指定できるかは、裁判例が分かれます。肯定例もありますが(東京地裁判例昭和62年4月22日)、否定例として「被相続人が、そのように指定した場合を除き認めない」との判例もあります(広島高裁判例平成12年8月25日)。
祭祀財産承継者の地位
祭祀財産の承継には、相続の承認や放棄の規定がありません。つまり、承継の放棄や辞退はできないということです。
祭祀主宰を理由に相続につき特典(特別の相続分や祭祀料)も認められません(東京高裁決定昭和28年9月4日)。
被相続人が祭祀主宰者に、相続分の指定をしたり遺贈や生前贈与をする事は差し支えないとされています。
離婚による復氏など一定の場合は、祭祀財産承継者を定めなおす必要があります。
遺体・遺骨の承継
かつては、遺骨は相続人の所有に帰する(大審院判決大正10年7月25日)というものもありましたが、現在はこの考えは採用できません。
遺体・遺骨の承継は、相続からはずれて考えるべきと解されています。
帰属者は喪主とする考えもありますが、判例は祭祀承継者としています(最高裁判例平成1年7月18日)。
その所有権は、性質上埋葬管理と祭祀供養の目的の範囲内に、限られると解されています。したがって、他の一般の有体物とは異なり、その放棄は不可としています(大審院判例昭和2年5月27日)。
葬式費用負担と香典
葬式費用の負担については、全相続人共同負担説、相続財産負担説、喪主負担説など、裁判例・学説とも分かれています。
香典は、葬式費用等の遺族側の負担の軽減のための贈与と解されています。
したがって、葬式費用に充当することは問題ありません。
ただ、余剰が出たときに、相続財産に準じて分割対象とするか否かは、学説上も争いがあるようです。