わかる相続/買主の死亡
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
本ページは、相続の解説です。相続についてお困りの際は、無料相談も承っておりますのでお問い合わせください。
総説
売主・買主の間で、土地売買契約が成立し所有権は移転したが、その所有権移転登記を申請する前に買主が死亡しました。この場合、買主の相続人が2人いるときは、相続人中の一人と売主とで、亡買主名義に所有権移転登記の申請をすることはできるでしょうか。
亡買主名義とする所有権移転登記の申請は、買主の共同相続人全員と売主とで行うのを原則としますが、保存行為として相続人の一人と売主とで申請することもできます。
登記履行請求権の承継
登記権利者または登記義務者について、相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該権利に関する登記を申請することはできます(不動産登記法62条)。買主(被相続人)の相続人は、被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するので、登記の履行を求める請求権を有することになります。
この登記履行請求権は、相続人全員が承継しているから、申請は原則として、買主の相続人全員と売主との共同申請で行うべきですが、民法252条但書で定める保存行為として、相続人中の一人と売主とで申請することもできます。売主から、買主の相続人に対して、直接に売買を登記原因とする所有権移転登記はできません。売主と買主の相続人とが売買をしたわけではないからです。
買主の相続人であったが、相続の放棄をした者は、その相続に関しては、はじめから相続人にならなかったものとみなされるから、登記履行請求権を有しません。また、特別受益者は相続分があれば申請人となりますが、相続分がないときは申請人となりません。
添付情報
本件の登記申請における添付情報は、次のとおりです。
- 登記原因証明情報
- 相続を証する情報
買主に相続が開始したことを証する情報のほかに、買主の相続人の一人から申請する場合は、その申請人の相続を証する情報を提供します。 - 確定判決によるときは、判決書正本・確定証明書付き
- 登記義務者の登記識別情報
- 登記義務者の印鑑証明書
- 登記権利者の住所証明書
買主の死亡時の住所を証する情報を提供します。 - 代理人によって登記を申請するときは、当該代理人の権限を証する情報
登記権利者の相続人および登記義務者の委任状を提供します。
なお、登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人(本件では登記権利者)の死亡によっては消滅しません。
農地法売買の買主の死亡
総説
農地を目的とする売買契約締結後、農地法所定の許可申請中に買主が死亡した場合、買主死亡後に農地法3条の許可があったときは、その許可は有効でしょうか。
農地法の許可は、譲受人が農耕適格者であるか否かが重視されます。したがって、譲受人(買主)死亡後に、農地法3条の許可があったときは、その許可は無効です。
売買契約締結後農地法の許可申請中の買主の死亡
農地法3条または5条の許可は譲受人が農耕適格者であるか否か、または転用利用者として適格性を有しているか否か、という点について重点をおいて許可の可否が決定されます。
農地法3条の許可を申請し、買主(譲受人)の死亡後に、当該申請のとおり許可がなされた場合であっても、農耕適格者または転用利用者として適格性を有しているとされた譲受人は、存在しないことになります。買主の相続人が当該許可書を提供して買主名義に所有権移転登記を申請することはできません。死亡者(譲受人)に対する許可は無効です。
また、農地法3条または5条の許可を申請し、買主の死亡後に当該申請のとおり許可がされた場合、買主の相続人は、直接相続人名義に譲受土地の所有権移転登記申請をすることはできません。
農地法の許可後に登記申請までの買主の死亡
農地法3条の許可を停止条件として売買契約を締結し、その農地法の許可があったのち、所有権移転登記を申請するまでに買主が死亡しても、当該許可は有効です。
この場合は、農地法の許可があったときに所有権移転の効力が生じているから、その所有権移転登記の申請情報とあわせて相続があったことを証する情報を提供して、買主の相続人の一人と売主の共同申請によって、亡買主名義とする所有権移転登記を申請することができます。
しかし、売主から、亡買主の相続人名義に、直接所有権移転登記を申請することはできません。