わかる相続/遺産分割の当事者
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
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共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでもその協議で、遺産の分割をすることができます。なお、「いつでも」遺産分割の協議をすることができるといっても、相続開始後であることは当然であり、相続開始前の遺産分割の協議は効力を生じません。この理由は、相続人および遺産の範囲は、相続の開始によってはじめて確定するからです。
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、はじめから相続人とならなかったものとみなされるので、遺産分割協議の当事者とはなりえません。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされているので、遺産分割の当事者です。これに対して、特定遺贈の受遺者は、相続人の地位の承継者ではないので、遺産分割の当事者とはなりません。
相続分の譲渡を受けた者は、遺産分割の当事者となると多数説は解しています。相続分の譲渡は、譲渡人が譲り渡すことによって、遺産分割手続きにおける当事者適格を失うからです。裁判例には、相続分の譲渡がされた場合には、譲渡人が共同相続人の一人として有する一切の権利義務は、包括的に譲受人に移転されるので、譲渡人は遺産分割手続きの当事者適格を失うとともに、譲受人は遺産分割に参加させなければならないとするものがあります。
共同相続人中に行方不明者があるときは、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加できます。
特別受益者について、学説の多くは、超過特別受益者は具体的相続分を有しないが、遺産分割には参加させるべきとしています。登記実務は、遺産分割による相続登記について、特別受益者がいるときは、特別受益証明書を添付して、他の共同相続人間でなされた遺産分割協議書にもとづく登記の申請は、受理されるとしています。
遺産分割の協議は、委任状による代理人によって行わせることもできます。この場合は、代理人の印鑑証明書と代理人の権限を証する書面には、委任者の実印を押して印鑑証明書も添付します。
相続開始時に、被相続人に胎児があれば、胎児は相続についてはすでに生まれたものとして取り扱われます。しかし、その胎児が死産すれば、はじめからいなかったものとして取り扱います。胎児と遺産分割の取り扱いにつき、先例は「胎児の出生前においては、相続関係が未確定の状態にあるので、胎児のために遺産分割その他の処分行為をすることはできない」としています。
次に、未成年の子とその親権者とで、遺産分割協議ができるかを検討します。
親権者が共同相続人となる場合に、未成年の子が一人の場合、共同相続人である親権者が、その親権に服する未成年の子と遺産分割協議をすることは、いわゆる利益相反行為となります。すなわち、民法826条一項の「親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者はその子のために、特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない」という規定に該当します。したがって、遺産分割協議をするには、親権者は、未成年の子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。特別代理人の選任の申立ては、子の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
親権者が共同相続人となる場合で、遺産分割の当事者となる親権に服する未成年の子が複数いるときは、親権を行う者は各々の未成年の子のために、異なる特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。たとえば、共同相続人が親権者甲と未成年の子AおよびBである場合、親権者はAおよびBの各々について、異なる特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求する必要があります。
親権者と未成年の子が共同相続人である場合において、遺産分割協議の結果、親権者は被相続人の債務を承継するが、相続財産の分配は受けないものとするときでも、特別代理人の選任を要します。
親権者と未成年の子が共同相続人の場合に、遺産分割協議の結果が法定相続分割合と同一割合となるときであっても、未成年の子のために特別代理人の選任を要します。遺産分割協議の結果、たまたま法定相続分割合と同じになったに過ぎないからです。
相続放棄などにより、親権者が共同相続人でない場合について、判例をご紹介しましょう。判例は、「共同相続人中の数人の未成年者が、相続権を有しない一人の親権者の親権に服するときは、右未成年者らのうち、当該親権者によって代理される一人の者を除くその余の未成年者については、格別に選任された特別代理人がその各人を代理して、遺産分割の協議に加わることを要する」としています。