相続の効力
「春日部・越谷相続おまかせ相談室」による、相続・遺言・相続放棄の法文を解説しております。難しい言葉を使わず、どなたでもわかりやすいように解説しておりますので、ぜひご覧ください。
本ページは、相続の解説です。相続についてお困りの際は、無料相談も承っておりますのでお問い合わせください。
- 民法第896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
相続は、死亡のみによって開始します。
一身専属権(被相続人にのみに専属した性質をもつ権利)は相続されないと定めています。
たとえば使用借主の地位、委任者・受任者たる地位、組合員たる地位などは、被相続人の死亡と同時に消滅するため相続されません。これに対し、売買代金債権や賃借権は死亡によっても消滅せず、相続の対象となります。
被相続人が即死の場合
被害者が即死の場合、被害者に損害賠償請求権は発生するでしょうか。
即死の場合、権利義務の主体者でなくなり、損害賠償請求権を取得しないという説もあります。しかし、判例実務は相続を認めています。
財産的損害の賠償請求権は、即死の場合も観念的には致命傷と死亡との間に間隔があるとして、死亡による賠償請求権が本人に発生し、相続されると解されています(大審院判例大正15年2月16日)。
慰謝料請求権についても当然に相続されるとされています。
慰謝料請求権は、被害法益が被害者の一身に専属するのみで、単純な金銭債権として相続されるのです(最高裁判例昭和42年11月1日)。
(あわせて、同時死亡の相続順位もご覧ください)
遺骨の所有権
被相続人の遺骨は、遺産相続人が所有権を取得します。
したがって、第三者が被相続人の遺骨を所持している場合、遺産相続人は所有権に基づいて返還請求権を行使できます(大審院判例大正10年)。
家屋賃借権の承継
借家権の相続も問題になります。
判例の事例をご紹介します。
家屋を賃借していた者が死亡し、引き続き居住したのは賃借人と同居していた事実上の養子です。
思いやりのない家屋の賃貸人は、事実上の養子に対し「家屋はあなたに貸したわけではないから出て行け」と主張しました。
判例は、家屋賃借人の相続人がいる場合、同居者であるその事実上の養子は、相続人の有する借家権があるとして、居住を続けることができるとしました。
なお、現在では立法的解決がされています。
「居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、〇〇建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する」(借地借家法第36条1項)。
生命保険金の相続
生命保険金は、生命保険契約で被相続人を被保険者とし、相続人(妻や子など)を受取人に指定した場合、被保険者の死亡により支払われます。
生命保険金が相続財産となるか否かは、契約内容によって決まります。
相続財産となる場合は限られており、受取人を誰にするかで異なります。
受取人を「相続人」と指定した場合
生命保険金の取得は保険契約に基づくもので、相続によるものではありません。
この場合、相続人が受け取るべき権利の割合は、相続分の割合によるのが通常です。
受取人を相続人中の特定者と指定した場合
生命保険金は相続財産ではありません。
この場合、相続人以外の第三者を受取人とした場合と同様に、その保険金取得は保険契約に基づくもので、相続によるものではないためです。
受取人が死亡し、被相続人が再指定をしない場合
この場合、生命保険金は受取人の相続人が取得します。
死亡退職金・保護受給権・公営住宅の使用権
死亡退職金や保護受給権、公営住宅の使用権について、次の判例をご紹介します。
在職中に死亡した死亡退職金の受給金は、相続財産に属しません。
受給権者である遺族は、自己固有の権利として取得します。
生活保護法に基づく保護受給権は、被保護者個人に与えられた一身専属の権利であって相続の対象とはなりません。
市営住宅などの公営住宅の入居者が死亡した場合、その相続人はその使用権を当然に承継するものではありません。